逆引きの顛末?
         〜789女子高生シリーズ

         *YUN様砂幻様のところで連載されておいでの
          789女子高生設定をお借りしました。
 
 


とあるゆかしき住宅街の丘の上、
そこが拓ける以前より、
正しく天から舞い降りた天使のようにおいでの
由緒ある女学園がこれありて。
今でこそこちらのちょっとハイソな住宅街の
ランドマークのような扱いだけれど、
元はといえば、
他には何にもない長閑で田舎なところだったとか。
そうは言っても格式は開設当時からもあって、
婦女子に教育をというのからして、
相当に豊かな、所謂 選ばれた階層の人にしか
実質 無理だったほどの昔だというから、

 「今のほうが、開放的には違いないんでしょうよねぇ。」

縁故あっての名士の子女しか入れないということはなし、
途中入学も大いに歓迎という“門戸開放”は
今のほうが活発に働いてもおり。
逆に、どんなに有名な要人のお嬢様であれ、
成績がほややんな場合、
容赦なく落第という対処が下されもする スパルタでも知られておいで。
学園側の警備の負担を思って、
こちらから入学・就学は遠慮したなぞという もっともらしいことを
社交界にて吹聴して回っている筋の方もないではないそうだが、
ここをようよう知る人へは
“はは〜ん”とすぐにも露呈するよなバレバレな言い訳でしかなく。
それをますますのこと裏打ちするだろう、
そりゃあアグレッシブルなお嬢様がたが
この冬も張り切っておいでだったりするのだ、お姉様。(…誰?)





 「前々から交流があって、
  交換留学生をやりとりしていた英国の姉妹校から、
  久し振りにこちらへお一人やって来ることになったのだとか。」


初等科や中等部へとお越しのお話は毎年あったし、
大学のほうへも頻繁にお迎えしているが、
高等部へのお年頃となると、
大学進学への準備とか はたまた社交界へのデビュタントだったりとか、
向こう様の微妙な事情というのもあってのこと。
この数年ほどは なかなか、
こちらへ来ようという申し出がなかったそうで。

 「…いやいや、
  何だか怪しい騒動が多発していることを
  某 MI6が嗅ぎつけたからではありませんて。」

そんなの当たり前です、ひなげしさん。(笑)
つか、

 「おいでになると言っても、
  留学生として就学なさるという格好じゃあなくて。
  こちらで外交上の御用があるついでに、
  ウチの学園のクリスマスミサにも
  賓客としてお越しになるってだけなんですけどね。」

 「なぁんだ。」

今時の節電指向からか、
必須アイテムとしての価値が再燃中のコタツへあたりつつ、
教科書や便覧、問題集を開き、
ノートやルーズリーフをごちゃごちゃと広げ。
ついでに…というより、
そっちのほうが多くないかのスナック菓子も散乱させて。
関数や何やの計算問題を黙々と解いたり、
ここの化学式ってどんな応用問題が出ると思う?と
その筋の頼れるお人(笑)へ打診したり。
だあもう、何でこんな昔の言い回しを
今の今 覚えにゃならんのよとキレかけたり。(おいおい)
冬休みを前に立ちはだかる期末考査へのお勉強に、
かわいらしいおでこを寄せ集めるようにして、
力を合わせ、勤しんでおいでの三華様たちだったりする。
家へ帰ってしまうと
まずは“はあ疲れた”とついつい散漫になるのでなんて
ありもしないことを言い訳に、
お友達のお家で勉強してから帰りますという
一応の建前を家人へ伝えて、堂々の“寄り道”中なのが、
草野さんチと三木さんチのご令嬢たちならば、

 「私は家庭科の課題が難儀ですよ。」

ひなげしさんがうんざりと、自分の手元を見下ろしておいで。
今回はペーパーテストがない代わり、
授業で進めている編み物を
終業式当日までに仕上げることとなっており。
試験期間とは微妙にかぶさらないものの、
クリスマスのミサ当日までということなので、
遅れておいでの身では、試験休みの間も浮かれておれぬ。

 「マフラーなら簡単かと思いきや。」

途中で糸変えや模様編みを入れねばならずで、
そこがなかなか美しく仕上がらないのが、
平八には気に入らないらしく、結果ちいとも進んでいない模様。

 「増やし目が面倒ではありますが、
  慣れればざくざく編める、
  かぎ針でのストールの方が簡単だったかもですね。」

お料理よりそっちが得手の白百合さんが、
いかにも気の毒にというお顔をする。
課題は自由だったので、
ちょっと大きめの暖かそうなベストを
とうに編み上げておいでの七郎次であり。
早めに提出した人は終業式に返却してもらえるとあって
頑張ったらしい大作は、

 “あれは勘兵衛殿へだな。”
 “……。(頷、頷)”

決まってるよねぇと眸と眸を見交わした、あとのお二人、

 『きっとクリスマスのプレゼントですよ?』
 『シマダ、許さぬ。』
 『ちょ、何言ってますか二人とも。////////』

かく言う久蔵さんもとっくに提出したクチで、
だがこちらさんは、自分のミトンをざくざくと編んだとか。
ぎりぎりまでバレエの公演とかそれへの練習とかがあったので、
とてもじゃあないが、誰ぞを思って…なんて余裕はなかったらしく、
そちら小物に求められた“飾り付け”には、
別編みの花のモチーフを甲のところにつけの、
手首回りをフリル状にしのと、

 『…こんなかわいいのでは、
  確かに榊せんせえへってワケには行きませんものね。』
 『……。(頷、頷)』

似合うかもしれないけれどと ついつい感じた事実は、
白百合さんもひなげしさんも黙っとこうと思ったのは言うまでもない。(笑)

 「で、その英国からのお客人てのは、どういう筋の人なんですか?」

セーラー服のまま、髪も学校で結ってたそのままという白百合さんが
お煎餅へ手を伸ばしつつ、
賓客のお嬢さんについての話題へ大きく戻って下さっていて。

 「そんな話、アタシら少しも知りませんでしたよね。」
 「……。(頷、頷)」

それもそのはず、それこそ護衛の関係もあるとかで、
あくまでもサプライズな賓客だったらしいのだが。
女学園周縁の情報ですから、
ひなげしさんのアンテナへ引っ掛からないはずがなく。(う〜ん…)

 「護衛?」
 「ええ。外交官筋のお人らしいんですよ。」

こちらは ○ッキーをパリポリと齧りつつ平八が言うには、
王室の遠縁の末裔で、
世が世ならプリンセスと名乗ってもいいようなお立場の人。
在日外交官の知己というか遠縁の方でもあり、
米国やフランスでクールなジャパンが持て囃されているけれど、
何の英国の若い層だって関心がある人は多いのですよという方向での、
提携なり市場開拓なりを進めたいとする大人たちの
思惑あっての運びとかどうとかで。

 「金髪が綺麗なお嬢さんだそうですよ。」
 「…?」
 「何ですか、その中途半端な褒めようは。」

平八の気のない言い方へ、
久蔵や七郎次が小首を傾げたものの、

 「だって、お顔や姿が確かめられなかったんですよ。」

その大人たちの世界においては、よほど小さな動きなものか、
扱い自体がさほど大きくはなかったそうで。
友好的なイベントの一環、
麗しいお嬢さんという使者を立てて少しでも華やかにという、
よくある仕立てに過ぎぬので、
握手を交わす大人同士の思惑自体が重要、
お嬢さんは誰でもどうでもいいらしい扱いなのらしい。

 「何かお気の毒ですね、そういうお立場ってのも。」
 「……。(頷、頷)」

 それこそせっかくのクリスマスですのにね。
 本場ではお友達とかご家族と過ごすものなんでしょう?
 気の毒…。

どんなに優遇されたとて、きっと自由は利かないだろし、
そんな状況で、しかもこうまで遠い異国で過ごすなんて、
つまらないし寂しいだろうにねと。
教科書と睨めっこしていたお顔を見合わせ、
問題を解いていた手が止まってしまったお嬢様がた。

 とはいえ、

 「アタシらも大変には違いない。」
 「そだねぇ。」
 「〜〜〜。(頷、唸)」

そこは現状へ立ち返るのも素早くて、
古典の助動詞の活用がややこしいと唸っておいでの七郎次や
化学式の応用がどうにも苦手と、頭を抱えておいでの久蔵だったりし。
まだお日和は穏やかな冬の始め、
少女たちの胸のうちはともかくも、(苦笑)
静かに静かに過ぎてゆく気配でありました。



  …………で、安寧に終わっちゃうなんて
  ちいとも思ってないでしょ、皆さんも。(うう〜ん)




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